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 「ITシステム2025年の崖」。経済産業省が2018年9月に公表したDX(デジタルトランスフォーメーション)レポートの表題だ。その骨子は、老朽化したシステムを持ち続ける企業に明日はないということ。同レポートは年間最大12兆円の経済損失になるとし、2025年までにユーザー企業にシステム刷新を求めて、その手順を示す。 各国や各産業がデジタル化を推進する中で、日本企業のデジタル対応が大きく出遅れていることが、DXレポートを出す背景にある。なぜ、2025年なのか。1つは、ある欧州IT企業の旧版ERPのサポートが終了すること。このほかにも1990年代から2000年代にかけて数多く設置されたハードやソフトのサポートが終了する。その一方、2020年の東京オリンピックと5G(次世代移動通信システム)の実用化という大イベントが控えており、この波に乗って、デジタル化を一気に進めるうえで老朽システムが邪魔をする。全く新しいものに作り直すために、既存システムを破棄する方法もある。 ここでの老朽システムとは、20年、30年も使い続けている肥大化、複雑化した情報システムのこと。「これがほしい」「あれも必要だ」などと次々に機能を追加していった結果、誰も中身が分からないブラックボックス化し、付加価値を生み出せず、維持・保守コストだけがどんどん膨らんでいった。そのコストは現在、IT投資の総額の約8割を占めると言われており、多くの企業が成長のチャンスを失っている。 最大の原因は、数年ごとにハードを入れ替えて、ソフトをバージョンアップするのに長期間を費やし、稼働した頃には陳腐化した情報システムになっていること。しかも、その投資額が数十億円、数百億円にのぼることがある。たとえば、金融機関の第3次オンラインシステムが稼働したのは30年以上の前だが、今日までにどう進化したのだろう。何が大きく変わったのだろう。インターネット・バンキングを手がける新興勢力の台頭や新しい決済サービスを提供するIT企業が新たな顧客を獲得する中で、そ田中克己KATSUMI TANAKA日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任し、2010年1月からフリーのIT産業ジャーナリストに、2012年からは一般社団法人ITビジネス研究会の代表理事を務める。40年超にわたりIT産業の動向をウォッチし続け、現在はZDNETで「展望2020年のIT企業」を連載中。主な著書に、「IT産業再生の針路」、「IT産業崩壊の危機」(ともに日経BP社)などがある。日々、めまぐるしく変化するIT。企業の経営においても大きな影響を及ぼします。元日経BP社編集委員のIT産業ジャーナリスト、田中克己氏がITと社会の変化からその本質を見通します。2025年の崖IT企業の役割を再定義し、システム刷新を図る20vol.237 Winter 2019

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